Free!×岩美町 キャスト&スタッフトークショーレポート
2025年5月25日、『Free!』シリーズのアニメ制作におけるロケ参考地となった鳥取県岩美町にて、『Free!』×岩美町-Starting point for a new journey-と題して、岩美町の様々な場で作品公式イベントが開催された。
岩美町中央公民館いわみんホールにて、キャスト&スタッフトークショーが開催された。第1回公演、第2回公演ともに、七瀬遙役・島﨑信長さん、七瀬遙(幼少期)役・松元惠さん、音楽・加藤達也さん、キャラクター設定、総作画監督・岡村公平さんが登壇。初の岩美町開催となった当イベントでは岡村さんによるライブドローイングに加え、より多くのファンの方々へ届けるため野外放送も実施された。ここではそんなトークショーの様子をお届けしていく。
あたたかい手拍子に迎えられ、島﨑さん、松元さん、加藤さん、岡村さんが登場。それぞれの挨拶が終わると、イベントコラボカフェ参加店である喫茶店「れすとはうすロマン」の当日限定コラボドリンク「最高のEVER BLUEソーダ」が運ばれる。加藤さんや島﨑さんが爽やかな青色の見た目に触れる中、松元さんは「懐かしい味がする」と味の感想を語り、場は和やかな雰囲気に。そこから話題は松元さんと岡村さんが出演したドイツのアニメイベント「AnimagiC 2023」の話へ。岡村さんは「(松元さんが)僕の絵を本当に褒めてくださって。受け止めきれないほどの愛を語ってくださいました」と、松元さんとのエピソードを語った。
思い出話で盛り上がる中、本題のドローイングへ。まずはくじを引いて、岡村さんが描くキャラクターとシチュエーションを決める。シチュエーションには、鳥取砂丘、岩美町特産物といったイベントにちなんだものや、本編ED衣装といったものまで様々。中でも「ウサギ耳カチューシャ」が紹介されると客席から歓声が上がり、どのキャラクターに付けてみたいかという話で盛り上がる一同。期待が高まる中、キャラクターを島﨑さん、シチュエーションを松元さんが引くことに。ここからは第1回公演、第2回公演に分けて、その様子をレポートしていく。
【第1回公演】
お題は「岩美町特産物にちなんだ七瀬遙」に決定! 七瀬遙を引いた島﨑さんは「これ仕込まれてます?」と驚きを隠せず、客席も大盛り上がり。そして、ライブドローイングがスタート。完成を待つ間、話題は岩美町を訪れた印象へ。島﨑さんは『Free!』が町全体に歓迎されていると感じたそう。「岩鳶駅」に変身した岩美駅や、道の駅きなんせ岩美を始めとした町内のコラボグルメなど、今回のイベントに合わせた催しに触れながら、「こうやって町全体で特別な雰囲気を作ってくれるのは、今までファンの方々がマナーよく『Free!』という作品を愛してくれていたからだと思います。『Free!』は絆が一つのテーマですが、この岩美町で改めてその絆を感じることができました」と語る島﨑さん。
また、10年以上この作品に関わっている加藤さんは事前に岩美町を訪問した日のことを振り返り、「ホーム感というか、帰ってきた感覚が強かった」と語る。さらに、自身が作ってきた楽曲について「これまではコンテや映像などをもとにキャラクターや風景を想像しながら楽曲制作を行ってきましたが、実際の風景を目にしたときに本当にぴったりの曲だな、と腑に落ちる感覚がありました」と言うと、会場から大きな拍手が送られた。そして、「作品が長く続いてきたからこそ、曲もまた作品と一緒に成長してきたんです。それも全て、ファンの皆さんがいてくださったからです」と、感謝を述べた。その話を受けて松元さんは「会場に着くまで何度もマネージャー(ファン)の方々を見かけたんですが、周りに迷惑をかけないよう席を譲り合って、ゴミ拾いまでされていたんです」と、思いやりのある行動を明かす。島﨑さんが「凛ちゃんなんてゴミ箱蹴ってたのにね」と言うと、客席からドッと笑いが起こる。加藤さんは「それでも仲間がフォローしてくれたから」と、遙同様、凛もまた仲間に愛され、作品を通して大きく成長したと語った。
そして、話題は松元さんが参加された周遊バスツアーの話へ。作品のロケ参考地巡りで浦富海岸を通過した際、天気が荒れている中でもファンの方々の姿が見えたという。松元さんは「ほんとうにマネージャー(ファン)の皆さんが良い表情をされているんです。広がる景色と同じくらい活き活きとしている皆さんに目がいってしまいました」と語った。さらに、その海岸で心が動かされる体験をしたそうで、松元さんは「海岸沿いから岩美駅にかけては岩鳶高校の通学路の参考となった場所があり、絶対に心がざわつくはずなのでよかったら探してみてください」と、客席へ呼びかけた。そして、「ロケ地はもちろんですけど、移動中に見える田園風景からもキャラクターの声が聞こえてくるんです。バスに乗っているだけなのに作品世界に入っているような感覚でした」と、作品とシンクロする岩美の情景を言葉にした。
岩美中学校を訪れた際にはイワトビちゃんとサメヅカちゃんがお出迎えをしてくれたそうで、信長さんも呼べばよかったと話す松元さんに対し、島﨑さんは悔しさをにじませた。そして、5月26日(月)から翌年の9月末まで運行する『Free!』ラッピングバスについて松元さんは「どこを見ても本当に作中の景色が広がっているので、皆さんにはもう一度ゆっくりと岩美の町並みを歩いて感じてほしいです」と、熱く訴えかけた。
続いて、話題は2025年5月18日(日)東京公演、24日(土)鳥取公演と開催された『Free! Series ORCHESTRA CONCERT 2025-Starting point for a New Journey-』へ。今回七瀬遙役としてモノローグを生披露された島﨑さんと松元さん。どういった視点で演じるべきかを考えていた島﨑さんは、東京公演では『Free!FS』での遙、鳥取公演では『Free!FS』後の未来の遙をイメージしたと語り、「東京公演を経て、鳥取公演になった時、(演奏やファンの方々が作り出す)その場の雰囲気が、もう少し先の大人になった遙を引き出したんです。そういう意味で、その時限りのコンサートになったと思います」と振り返った。
貴重な裏話が語られる中、ここで告知へ。スクリーンに「第7回京都アニメーションファン感謝イベント『私たちは、いま!! ―京アニのセカイ展―』」のキービジュアルが映し出されると、岩美町を背にほほえむ遙について島﨑さんは「こんなこともできるようになって……」と親目線のように語ると、会場は笑いと温かい拍手に包まれた。続いて新商品紹介コーナーでは岩美町とコラボした遙たちの新規イラストが映し出され、島﨑さんたちは遙たちの大人びた表情を絶賛した。
そんな中、ついに岡村さんのイラストが完成! 松元さんが持参した鯖のぬいぐるみを持ち、イベント時の島﨑さんの衣装をまとった遙がお披露目されると、松元さんは「なんか私の対応にすごい困ってる信長さんに見えてくる……!」と言い、岡村さんは「正解です(笑)」と答え、客席から笑みがこぼれる。岡村さんは「皆さんがすごく真剣な話をされていたのに、(どちらかというと)ふざけている時の遙を描いてしまいました」と話すと、島﨑さんたちはこの会を表すような素晴らしい絵だと賞賛し、会場からも盛大な拍手が贈られた。
【第2回公演】
こちらのお題は「(歴代シリーズのうち、いずれかの)本編エンディング衣装を着た松岡凛」に決定! 前公演の遙に続き、凛を引き当てた島﨑さんのくじ運に会場は大盛り上がり。島﨑さんも「真っ先に飛び出してきそうな2人だもんね」と驚きつつも、凛を引く予感がしていたと語った。果たして岡村さんはどのエンディングを選ぶのか。そんな期待も高まりつつ、トークコーナーへ。
まずは第1回に引き続き『Free!』シリーズオーケストラコンサート2025の話から。加藤さんは前回のコンサートで叶わなかった『Free!FS後編』の楽曲を、今回絶対に入れたかったという。リレー前のミーティングから決勝シーンまでの楽曲を一度にやりたいと考えていた加藤さんは、今回のコンサートを振り返りながら「音楽と演出を駆使して皆さんの頭の中にそのシーンを映したいと思っていました」と、演出の意味を明かした。続けて、「大切なのは僕たちの世界に住んでいることをイメージして、遙たちの関係性や想いを音楽で表現していくことだと思っています。そこに難しさがあり、同時にやりがいもありました。だからこそ、皆さんの音楽を聞いて感動しましたっていう声を聴くと本当に嬉しいです」と、『Free!』の音楽に込めた並々ならぬ想いを語った。それを受けて島﨑さんは「そうしたプロのこだわりは一度聞いただけでは分からないと思います。感動していたらなおさら『ここはこうだった』みたいな分析はなかなかできないですよね。だからこそ、また、ね」と、未来に期待を寄せると、客席から共感の拍手が送られた。
松元さんは『映画 ハイ☆スピード!』公開時、当時アフレコに向けて島﨑さんが幼少期の遙の声を何度も聞いて吸収しようとしてくれていた話を挙げながら「キャスト、スタッフ全員が本当に真剣にキャラクターと向き合っているように感じるんです。そういう姿勢が、『劇場版 Free!-the Final Stroke-』公開から数年経った今でもこれだけの熱を生み出す一つの要因じゃないのかな」と話した。そして、今回のオーケストラコンサートを振り返り、「オケコンは本当に特別な空間で、音楽と(島﨑さん演じる)遙さんがいて、受け入れてくれるマネージャー(ファン)の皆さんがいて、そうやって『Free!』の世界に導かれる素敵な経験をさせていただきました。本当にありがとうございます」と真剣なまなざしで語り、会場は拍手で埋め尽くされた。
そのまま岩美町の話へ。「もう一度岩美に来たら行きたい場所」というお題に、松元さんは凛の夢に出てくるトンネル(1期7話)のロケ参考地である網代隧道を挙げ、「私は夜に行かせていただいたんですけど、朝の時間帯だとまた見えてくる景色も、感じるものも全然違うと思うので、そういう意味でもう一度行って確かめたいなと思いました」と話す。一方、島﨑さんは「こうして岩美町が岩鳶町になっている時点で感無量というか、作品の雰囲気を感じられる岩美町を見ているだけで心が満たされます」と話す。加えて「またこうやって何かイベントがあって、町全体で盛り上がっている岩美町にお邪魔したいですね。次来た時はきっとまた見え方が違うと思うんです。その時にしか見えないものがきっとあるはずだから。そうやって自分の中での最高の景色を更新していきたいですね」と心境を語ると、加藤さんもうなずきながら「本当にその通りだと思います。学生時代に『Free!』を観始めた方が成長して、社会人になって、家庭を持って、という中できっとその方自身の見方も変わってくると思うんですよね。その時に感じるものを大切にしていただきたいし、見方が変わっても変わらない繋がりを残したいと思います」と話した。
続いて、岩美町で行ってみたいイベントの話へ。加藤さんは音楽ならいろいろな関わり方ができると言い、「1つアイデアとしてあったのが、岩美町駅の前に大型トラックを止めて、そこでトラックの後ろが急に開いたと思ったら僕が演奏しているという(笑)」と言い、笑いを誘う。松元さんは岩美町の海辺を挙げ、「本当にここ鳥取の海は透き通っていてきれいなので、その海と一緒に『Free!』の世界に浸れるようなことをしたいです」と言い、島﨑さんが「すべり台ドン体験会でもやります?(笑)」と提案すると、客席から黄色い歓声が上がる。
そうした夢が広がる中、岡村さんのイラストが完成! 岡村さんが選んだのは『Free!-Eternal Summer-』エンディングの衣装。決め手を聞かれた岡村さんは「完全に僕が描きたかっただけです(笑)」と言い、会場の笑いを誘った。イラストを見ながら松元さんが「(凛の)遙への対抗意識が垣間見えない?」と言うと、島﨑さんは「いや、(凛なら)これくらいやっちゃいますよ!」と語る。加藤さんも「オーストラリアであんなかっこよく朝食を食べていましたもんね」と、凛の仕草からにじみ出るかっこよさを語ると、「遙には無理です」と島﨑さんが言い、再び客席から笑いが起こる。
トークが盛り上がる中、惜しまれつつも最後の挨拶へ。岡村さんは今回がめったにない機会だと言い、「今後もこうした機会を作っていけるよう頑張っていきます」と話した。加藤さんはオーケストラコンサートや岩美町イベントを通じてファンの方々と喜びを共有したと語り、「この喜びを永遠のものにするために、そして、またこうして皆さんと共有できるものを残していくためにがんばっていきます」と伝えた。松元さんは「『Free!』は終わらないと思いますし、絶対またここに戻ってきたいと思っています。これからも一緒に応援していきましょう!」と、あふれる想いを言葉にした。島﨑さんは「『Free!』シリーズは何十年経っても何らかの形で続いていく作品になるだろうなと思っていましたが、今回のイベントで確信に変わりました。今後こうしたイベントがあっても無くても、部屋に遙のぬいぐるみが飾ってあるとか、そうした生活の一部として思い出しながら愛し続けてもらえたら嬉しいです。これからも『Free!』シリーズをよろしくお願いします!」と伝えると、会場から盛大な拍手が贈られた。そして、最後に全員立ち上がり、島﨑さんによる恒例の掛け声「Take your marks, ready GO!」でイベントは幕を閉じた。