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「劇場版 Free!-the Final Stroke-」後編

初日舞台挨拶
オフィシャルレポート

※本レポートには「劇場版 Free!-the Final Stroke-」後編 本編の内容が含まれます。

2022年4月22日

河浪栄作(監督)×岡村公平(総作画監督)×
八田真一郎(プロデューサー)

4月22日(金)に「劇場版 Free!-the Final Storoke-」後編の初日舞台挨拶がなんばパークスシネマで開催され、河浪栄作監督、キャラクター設定・総作画監督の岡村公平さん、プロデューサーの八田真一郎さんが登壇いたしました。

公開初日を迎えての気持ちを聞かれた3人。
河浪監督「前編のときは(コロナ禍もあり)、座席が一つずつ空いていて、レイトショーもなかったので、こうやって席が埋まった状態で公開できたことは本当に良かったなと思います。」
岡村「まずはファンの方々にこうやって作品を届けることができたということ9割と、もっと描いていたかったなという寂しさ1割の気持ちです。」
八田「ただ一言ですが、本作をファンのみなさんにこうやって届けることができたことが何よりの幸せです。」
と、それぞれが率直な思いを明かします。会場に駆けつけた作品ファンからのメッセージボードに注目し胸を打たれる様子も窺えました。

作品の制作にあたり、印象に残った点を聞かれると
河浪監督「正直、『大変だった』みたいな話ばっかりになりそうですが…キャラクターが多く、1人泳ぐだけでも関連してくるキャラクターが複数発生してしまいます。物語全体の進行を考えるための補助線として、グラフや表のようなものをいくつか作りながら作業していました。」と制作当時を振り返ります。

たくさんのキャラクターを描くことへの苦労について聞かれると
岡村「めちゃめちゃ大変でした。ただ、だいぶ描き慣れているところもありました。作画監督の皆さんも前編から引き続いての作業でしたし、何より9年も描いてきたので、スタッフの皆さんも描き慣れている感じがありました。僕の方で少し色気を足すくらいで…。大変とはいえ、楽しかったかなと思います。」と9年間で培ったチームワークで作品を完成させた思い出を語ります。

制作の思い出深いエピソードを聞かれると
八田「やはり9年近く『Free!』と泳ぎ続けている中で、技術の向上もそうですが、何より水の表現の進化がすごいなと思いましたね。実写のように見えますし。シリーズを追うごとに、水の表現と、キャラクター1人1人が成長していく様が重なって描かれていくのが印象的でした。」
と、シリーズを重ねていく中でキャラクターと共にクリエイターたちも成長してきたことを語ります。

技術面に関して
河浪監督「1期の頃は手書きの良さを出そうとしていたこともあったので、今観るとすごくノスタルジックな印象を覚えます。本作『Free!FS』ではプールの描写に3DCGの技術も借りて、より一層“そこに遙たちがいる感じ”を意識しています。世界に出ていく遙たちの様子を、地に足のついた表現で実感を持って描くためにシリーズを積み重ねてきました。CGの技術も年数と共に洗練されていきましたし、水の色味など質感の表現も進化し続けていました。ここまで蓄積してきたものすべてが画面に出ていると思います。」と、こだわりを明かしました。

前編と後編で自分の表現に変化を感じることがあったかと聞かれると
岡村「意識して変わっていったことはないと思いますが、描き慣れてきたことによって『もう少しこうしたい』だとか『もう少しこうできるんじゃないか』という幅ができてきたので、その辺りは前編でできなかったことを後編ではやっています。」と、描き慣れることで表現の幅が広がったと語ります。

キャラクターに対する思い入れをプロデューサーの視点で聞かれると
八田「1期の時は5人のメインキャラクターがいて、そこから『映画ハイ☆スピード!』や『Free!-Dive to the Future-』を経てキャラクターが少しずつ増えていって。今回の作品でも新たなキャラクターがフォーカスされたり…。本当に大所帯になりましたね。1人1人にしっかりとカメラを向けて、ちゃんとドラマを作っていくぞというコンセプトを持った監督がいろいろなプロセスを紡いで行き、なかなか大変な作品設計だったと思います。」と語ります。

『劇場版 Free!-the Final Stroke-』前編・後編でのストーリー展開について意識したことについて
河浪監督「今まで歩んできた歴史の積み重ね、登場人物が少しずつ年齢を重ねていった部分ですね。各シリーズが中学生・高校生・大学生という年代ごとでそれぞれ監督が違うというのも、振り返ってみてですが、作品にとって良い影響があったのではないかと感じています。企画当初はこの作品がどう着地するのかなかなか想像できなかったのですが、今回、無事着地できたような気もするので、ひとまず良かったのかなと思っています。」と振り返り、監督の言葉に拍手が湧き上がりました。

アフレコで印象に残っているシーンについて聞かれる3人。
河浪監督「皆さん本当に長い間キャラクターに命を吹き込んでくださっていますよね。そのこだわりや気持ちをすごく感じながらアフレコに参加させていただきました。直接、この作品への気持ちなども語ってくれましたね。」
八田「こういったご時世なので、限られた人数でしか収録できない窮屈なこともあったのですが、それでも大事なところはセッションでしっかりコミュニケーションを取りながら進めていたので、その息遣いも感じられるんじゃないかなと思います。島﨑さん、宮野さん、鈴木さんとは掛け合いのシーンを一緒に収録したりして、皆さんも熱を込めて演じてくれていました。すごく良かったんじゃないかと思います。」
岡村「タイミングにもよりますが、アフレコの前だと『こういう感じで芝居してもらいたいな』と想定しながら描いてはいます。アフレコが終わってから、収録されたキャストさんの芝居を聞きながら口の形を変えたり微調整をしています。実際の芝居で『こう来たか!』と思うことも良くあります。」とアフレコを通してそれぞれの思いを語ります。
河浪監督が本作のアフレコについて「前作の収録から間が空いていましたので、現場がまるで同窓会のような雰囲気になっていました。皆さん物語を面白がってくれまして、非常に高いモチベーションで収録に臨んで下さいました。『Free!』の制作を続けてきて、もっとも幸せなアフレコを体験することができたと思います。」と語りました。

ここで、七瀬遙役の島﨑信長さん、松岡凛役の宮野真守さんからのメッセージ動画が流れます。

宮野真守「皆さんの応援のおかげです、本当に本当にありがとうございます。『Free!』シリーズの集大成となる後編なので、僕らの到達点というか僕らが目指したもの、込めた想いをみなさんに感じていただきたいなと思います。台本を最初に読んだときにある意味、とても意外でした。凛の姿というか…そういった意味でも予想外の展開というか、『やっぱ「Free!」ってこうだよね!』みたいな思いも抱けるような内容になっているので、存分に楽しんで貰えるものになっているのではないかと思っております。ぜひ最後まで楽しんでください!皆さんのおかげでここまで泳いでこれました。」と作品への感謝を述べました。

島﨑信長「よくある言葉ですけど、感慨深いというのが一番なのかな。アニメってみんなで作ってるもので、みんなが相乗効果でいろんな分野のプロフェッショナルが集まって、積み上げて作っているものだなと常々思っています。素晴らしい作品を、間違いなく素晴らしくなっているであろう作品を本当にありがとうございます。『Free!』シリーズに関わって来れて、僕は幸せです。」
コメント収録をしている現場は「スペシャル版パンフレット」のグラビア撮影の現場だと伝え、「スペシャル版パンフレット」の内容への期待を伝え、「『Free!』シリーズ、まだまだいろんな仕掛けだったり、色んなところで皆さんを楽しませてくれること間違いなしですので、末長く愛していただければ幸いです。」と喜びを噛みしめながら思いを語りました。

島﨑さん・宮野さんからのムービーコメントを受けて、
河浪監督「遙と凛もそうですが、このキャストじゃないと『Free!』にならないんだ、ということを非常に強く感じています。それくらい『Free!FS』のアフレコは幸せな空間でした。キャストのみなさんが演じてきた年月の積み重ね、重みを感じさせる演技……それらを惜しみなく披露してくれた現場でしたから。初日のアフレコは遙・凛・真琴・郁弥の4人で収録を行いました。まず、ブースに入ると皆さんから『すごくテンションの上がる台本だったよ!』と声をかけていただいて。そこから演技や解釈の擦り合わせを行っていき、最終的に画面いっぱいにパワーあふれる演技で答えていただきました。」と現場でのエピソードを交えながら語ります。

イベント最後に
八田「9年間泳ぎ続けてこれて、皆さんにもずっと追いかけていただけて本当に幸せな作品だなと思っております。スタッフも作品が大好きです。キャラクター設定含めてみんなでチーム一丸となってどうしたらファンの方に喜んでもらえるだろうと日々考えながら皆さんに発信させていただいてきました。そこで今回、そんなスタッフの一人から預かってきたメッセージを代読をさせていただきます。」と、手紙を取り出し
代読文(スタッフからのメッセージ)「TVアニメ『Free!』の制作発表会の生放送が行われた9年前、当時は生放送を見守りながら、様々な宣伝周りの展開でとても緊張していたことをついこの間のように感じます。日頃のファンの皆様の熱い想いに何度も助けられ、涙し、ここまで駆け抜けることが出来ています。笑顔になってもらえるように、驚いてもらえるように、なんとしても幸せになってもらえるように頑張ろうと思い続けてきました。本当にありがとうございました。これからも新しいお知らせなど発信していきますので応援の程どうぞよろしくお願いいたします。」と、改めてファンへの感謝をスタッフのメッセージを通じて届けました。

岡村「僕が入社したのは11年前なので、『Free!』の1期が始まった時はまだ原画スタッフでした。『映画ハイ☆スピード!』が始まったときは作画監督を担当し、3期で総作画監督補佐、本作でキャラクター設定と総作画監督を務めさせていただいて、『Free!』という作品と一緒に自分のアニメーター人生も成長してきたのだなと思うと感慨深いなと感じています。今回で遙たちの物語は完結となりましたが、『Free!』という作品はまだ続いています。実際に、昨日も『Free!』の版権を描いていました。まだまだ楽しむことが出来るので、これからの情報も楽しみにお待ちいただければと思います。今日はありがとうございました。」

河浪監督「本当に長い時間『Free!』と関わってきたんだな、という重みを感じつつ、改めてTVシリーズを見直し、各キャラクターの立ち位置を確認しながら、本作の制作に取り組んできました。現時点での自分なりの『Free!』という作品への想いを映像に落とし込めたように思います。これだけたくさんの方が集まって観てくださること自体、すごいことですし、作り手として非常にありがたいなと思っています。
ただ、前編で居酒屋のシーンを作って、居酒屋で皆さんが盛り上がれるかなと思っていたらコロナが来てしまい…また、作品のラストに登場する海外に行けたら楽しいだろうな、と思っていたら世界情勢が怪しくなってしまい…。コロナ禍になる前にラストの水泳シーンの原型を組み立てて、これは応援上映で盛り上がるだろうな、と期待していたものの、結局「後編」の公開時期ですらまだまだコロナの状況が続きそうで…。監督としての僕は夢に到達できなかったのですが、たったひとりの夢と引き換えに、遙たちは夢を掴んで未来へと一歩を踏み出すことができたので、そこに関しては非常に良かったな、と思っています。」とそれぞれが『Free!』を制作してきての思いや『Free!』を応援し続けたファンへ感謝の思いを語りました。

ラストは河浪監督の「Take Your Marks! Ready Go!」の呼びかけに応じて観客が力強く拳を突き上げ、『Free!』を愛する会場全体の団結力を感じさせる中、初日舞台挨拶は幕を閉じました。